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定額残業代の是非

しばしば残業代未払いの問題で注目される「定額残業代制度」ですが、今回はこの「定額残業代」についてのお話となります。

 

 

そもそも定額残業代とは

残業代は通常、法定労働時間をオーバーしたときにその時間に応じた割増賃金を支払うものです。

定額残業代は、その残業時間の変動に関係なく、毎月「定額で〇〇時間分」の残業代として支払うものです。つまり企業が残業が発生することを前提に取り入れている制度でもあります。 

 

定額残業代制度はブラック企業の仲間入り⁈

「ブラック企業」という言葉が世に広まった頃に私が本屋で見つけた本に書いてあった言葉です。

残業時間に応じた残業代ではなく、定額で残業代を支払っている会社はブラック企業の可能性があるといったことが書いてあったと思います。

これはこの制度を採用していた多くの企業が、給与支払いの抑制を表に出し過ぎて従業員軽視になった企業が多かった結果だと思います。

(もちろんうまく運用している企業もありますが、、、念のため)

 

定額残業代=ブラック企業と思わせてしまった理由

それは、

1.求人募集の段階で定額残業代を明記せず、基本給などの中に隠れている

2.従業員に定額残業代制度を周知・理解させていない

3.定額残業代がどの名目で何時間分なのかが賃金規程や給与明細に載っていない

4.定額残業代分の残業をしないと支給されない

5.定額残業代分以上の残業をしてもその分の残業代が支払われていない

大体こんな感じでしょうか。

 

1の求人募集については、ハローワークの求人募集では明記する必要がありますが、民間の求人広告だと総額+交通費のような表記をたまに目にします。

 

2と3については、これができていないがゆえに「うちの会社は残業代が出ない」と従業員に思われる可能性が高くなり、上に書いたとおりブラック企業というイメージを持たせてしまうこともあるかもしれません。

そもそも3ができていないと定額残業代が制度として認められないケースもあります。 

 

4は論外です。

5については、企業の言い分として定額残業代分以内に終わらせられない本人の責任と言われそうな内容ですが、管理できていない企業の責任と行政や司法からそう判断される可能性の方が高いと思われます。

  

定額残業代制度の企業側メリット

定額残業代制度を正しく運用したとして企業が受けるメリットは、

・給与計算を簡略化できる

・従業員の業務効率の向上を促進

1つ目については、中小・零細企業だと事務員が1人だけだったり、社長や社長の奥さんが事務をこなしたりすることが多く事務処理が大変になります。それを定額で残業代を支払うことにすれば細かい計算を省略できるといったメリットがあります。

 

2つ目については、仮に30時間分の定額残業代が支払われているとして、ある月の残業時間が10時間であったとしても減額せず30時間分の残業代を支払います。従業員としては残業を少なくしても給料が減らないわけですから、業務効率の向上を図る1つの動機となり得ます。

反対に企業が多く給与を支給することにもなりますので、どちらを主軸にするか判断が必要です。 

 

定額残業代制度を採用する時の主な注意点

〇自社の残業時間がどの程度なのかを調べ、それを基準に今後の推移を予測し、定額残業代を設定する

〇「定額残業代は〇〇時間分で〇〇手当として支給する」と賃金規程や雇用契約書に明記し、従業員に理解してもらう(金額は個人によって異なることもあるので、雇用契約書や給与明細に明記)

〇設定した残業時間(〇〇時間)が、しばらくして残業が減ることになったことを理由に設定時間を減らし定額残業代も減額することは従業員の合意が必要(労働契約の不利益変更となる可能性があるため)

ざっとですが挙げてみました。

 

おわりに

定額残業代制度は残業があることを表明しているものです。最近では残業時間がどのくらいかを判断基準にする求職者も増えています。

適切な運用を前提として、総合的なコストを含めメリット・デメリットを比較して制度の採用を考える必要があると思います。

 

「うちの会社は定額残業代制度を採用しています。残業時間は〇〇時間で金額は〇〇円。〇〇手当という名目で支給しています。仕事がきっちり終われば残業していなくても全額支給しますし、仮に定額残業代分の残業を超えても割増賃金を支払います」

きつい言い方かもしれませんが、少なくともこれが言えない企業では定額残業代制度を採用するのは難しくなってきているのかなと思います。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。